始まりの日

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「うーん」 「どーしたんっスか? 携帯見ながらそんな難しい顔して」 仕事の休憩中。 私の隣に座り、ズズッとコーヒーを飲むのは、会社の後輩。 「出来過ぎてるなぁって思ってさ」 「はい?」 「いや、この恋愛小説」 「恋愛小説?」 片手に持っていたコーヒーをコトリと机に置くと、私の携帯を覗き込んできた。 あ、コーヒーの匂い。 「恋に落ちる、ねぇ…」 「目が合って微笑まれただけで恋に落ちるってさ、無理じゃない?」 みんなは解んないけど、絶対私は無理だな。 それにこんな単純に落ちるもんかね。 「まあ先輩には無理っスね」 「何を根拠にそんな事言うのさ!」 「性格的に、ですかね」 チッ、このやろ! 言い返せ無いのが悔しい! 「佐原には負ける」 「先輩に言われちゃお終いっスよ」 「なんだとぅ!?」 そう食いかかれば佐原はクスクスと笑う。 悔しいけど、佐原は何をしても格好いいのがムカつく。 「じゃあ仕事に戻りますね」 「あ、私も戻る」 だけど恋までには行かないんだよねぇ。 .
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