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ぞくり、と背筋が粟立った。
生理的に受け付けないと言うよりも、アレを見た瞬間に体が拒否をしたのが分かる。
おおよそ人間が触れてはいけない禁忌であると知らせるかのように。
おぞましいモノを見た時のように、思わず視線を逸らしてしまった。
けれど、ムジカ本人は愉悦を含んだ表情でそれを見ているではないか。
忍び笑いを漏らしながら、右手を翻して自身の目の前にかざしている。
その様子はまるで、モヤを吟味しているかのようだった。
そして一頻り眺めた後、少女の横顔を見詰めながら動けぬ彼女の胸元辺りに腰をおろす。
途端、近くなった闇色に少女は鳥肌がたってしっまった。
体を捻り、痛みに堪えながら、再び逃げだそうと足掻くのだが、当然のようにそんな事は許して貰えない。
代わりとばかりにムジカの左手が少女の細い首筋を軽く押さえつけた。
圧迫される喉から呼気が漏れ、そのクセ新鮮な空気があまり入ってこない。
辛うじて呼気は出来るものの、絶妙な力加減で押さえ込まれている。
段々と血の気を失う少女に向かって、ムジカは心底楽しそうな表情を浮かべる始末。
悪趣味にも程がある。
そして、そんな嗜好を増長させるような発言までをも少女に向かって告げたのである。
「私はね、私を受け入れない者を好ましく想うんだよ。
私の事を憎んでる相手ならば尚更。」
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