序章

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「………な、にを…。 ぃ゛、…ッ…!!」 みしり、と音がした。 肩を踏みつける女の力が増し、骨が嫌な音をたてて軋み始めたようだった。 激しい痛みに女の足を退けようともがくものの、凄まじい力で地面に縫い付けられている為にどうにも出来ない。 痛みで意識が朦朧としだしたその時、再度優しい声音で女は囁いた。 「神に祈りを捧げたところで、あの無慈悲な老人は優しく手を差し伸べる事などしてくれない。 けれど我らは違う。 迷える子羊達の言葉を聞き、心に抱いた願いを叶える術を授けてあげる。 君が、私を滅ぼせるだけの力が欲しいと願うなら、それに見合うだけの力を与えてあげようじゃないか。」 「………ふざけ、る、な。」 誰がお前の世迷い言に耳を貸すか、そんな意味合いを込めた一言を少女は返した。 「私は至って真剣なつもりだけれど。」 それでは先程までの話と違いすぎる。 少女を手に入れてみたいと言っていたくせに、今度は自分を殺せるだけの力を与えてやろうと告げるのだから。 「何を迷う必要があるのだろうね。 君の願いは叶えられ、魔物を滅し、仲間の無念を晴らせるじゃないか。 そして君は誰にも負けぬ力を得て、魔物から弱者を守っていくのだろう?」 女の言葉に、心臓が一度大きく跳ねた。
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