序章

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「君が選ぶ選択を、一体誰が責めたてるものか。 寧ろ良くやったと、君の仲間達は褒め称えてくれるだろうね。 我が身を犠牲にしてまで誰かの為に献身的に尽くす君を。」 優しい声音、蠱惑的な微笑み、優美な立ち姿。 堪らなく魅力的な容姿で相手の警戒心をほぐし、饒舌な言葉で心を惑わせる、悪魔のような女だと思った。 真実女の種族までは分からないが、言葉巧みに惑わせてくるのは魔物ならではなのか。 女の誘惑に乗れば皆を守れるだけの力が手に入る。 仲間の想いも願いも、全てを引き継いでいける。 心の中に波紋が広がるように、じわりと女の言葉が染み込んでくる。 「さあ、私の名を呼んでご覧。 ムジカ、と。」 追撃するように蠱惑的な声が上から聞こえた。 その声に惹かれるように、改めてムジカの姿をじっと見た。 サラシのように胸元を隠すだけの黒布が、ムジカの白い肌を際立たせているように見てとれる。 括れた細い腰、小さな臍穴、腰骨の辺りに二本の太いベルトが巻かれ、黒いロングスカートの両サイドに際どい位置まで入ったスリットが入っている。 其処から覗く真っ直ぐな素足に、足首から膝辺りまでクロスに交差された黒いリボンが巻かれ、風にたようスカートの下には黒いホットパンツがはかれていた。 艶かしい白い肌に黒い衣服、そして内側から滲み出る妖艶さ。 その外見も、言葉も、人をたぶらかし、惑わせるだけの魅力が十分に備わっているように思えて仕方がない。
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