二、二人の千代

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夕暮れ 海之はまだ墓にいた 夜には土方たちが来る 急な話だ。 とため息をつきつつ立ち上がると後ろに人の気配がした すらり。と刀を抜き茂みにむけた 「誰だ」 低い声でそう言うと 千代が申しわけなさそうに出てきた 「ごめんなさい… でもここのお墓に花を添えたくて…」 「誰の墓だか知ってるか…?」 首を横にふる千代を見て海之は墓から目をはなさず口を開いた 「俺と…夫婦になろうと約束した女の墓だ」 「夫婦に…」 「江戸の武家の娘だった ただ本当の娘じゃねぇ 引き取られたんだ…」
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