最初のお話「お母さん」

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真悠子はふらりとベッドから立ち上がった。 そして髪も整えずパジャマのまま玄関へと向かった。 真悠子を止める者はいない。 愛した夫も、あの事件の日から数日後に出ていってしまった。 真悠子はがちゃりと鍵を開け、裸足のまま力なく部屋を出た。 真夜中、静まりかえったマンションの渡り廊下には真悠子のぺたりという足音しか聞こえない。 誰に会うこともなく、ただ響く自分の足音を聞きながら、真悠子はエレベーターのボタンを押した。 すぐに目の前の扉が開く。 ふらふらとそれに乗り込み、屋上のボタンを押して扉を閉めた。 .
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