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「真紀…今行くからね…」
真悠子の呟きはエレベーターの密室に虚しく消えていく。
夫が無理して買った高層マンション…中々屋上に着かない。
ふと、後ろにある鏡に視線を移すと、真悠子はぞくりと背筋に悪寒を感じた。
ちらりと見えた人影。
そんな筈はない。
エレベーターに乗った時は真悠子一人だった。
その後はどの階にも止まらずに真っ直ぐ屋上へ向かっている。
だが、慌てて視線を前に戻しても…確かに背中に気配を感じる。
人の気配を…
ありえない。
とうとう幻覚まで見るほど自分は追い詰められているのかと、真悠子が自嘲気味な笑みを浮かべるとふわりと花の香りが鼻をくすぐった。
これは…なんの花の香りだっけ?
小さい頃…どこかで…
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