外史 似て非なる世界

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こんな筈ではなかった。 おそらく、少年がくれた強さのおかげ。 【計画変更。部隊長が死んだなら他に人質にして効果がありそうな者はいないはず】 周囲の者達は、既に先の一撃で首が不自然に曲がりながらも、フラフラと立ち続けている部隊長に眼を取られている。 今が好機。 自分を捕らえる為に近付いていた三人の兵に近づくと一人の剣を奪い、三人を剣の柄で殴り飛ばす。殺さないように、それでいて一時は動けない。そんな風にできればいいのだが、力の加減がわからない今の状況ではそれは難しい。 なので柄で鎧の上から殴りつけてみた。 吹き飛ばされた男達は近くの家にぶつかると、泡を吹いて気を失っているようだ。 どうやらこれなら殺す心配はないらしい。 三人を殴っただけで壊れかけた剣を捨て、次の相手を探す。 周囲の賊達は明らかに怯えていた。数では賊が明らかに勝っているというのに。 【訓練すらされていないのか…】 包囲するわけでもなく、お互いを庇いあえる距離でもない。 明らかに無策な隊形。 各個撃破が最適であった。 すぐさま近くにいた賊へと走り出せば、賊は取り乱し剣を目茶苦茶に振り回し始める。 それを見切るはたやすく、掴んで剣を奪うとすぐに弾き飛ばして次の賊へと向かった。 十人程同じように倒した時には、もう周りの者達は皆逃げ出し始めていた。 『動くんじゃねえ!!』 不意に響いた声。 周囲を警戒しながらそちらを向くと、見るからに勝ち誇った賊が二人、数人の村人を盾にしてこちらを見ていた。 『これ以上動くんじゃないぞ!もし動けばこいつらを殺すからな!』
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