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『ん?』
もう一人。
気がつくと小さい方の女がいなくなっていた。
どこに言ったのかと探そうと思ったのだが、女は思わぬ所にいた。
それは私の真横。
僅かに視界に映るぐらいなのだが、あちらから熱烈な視線を感じている。
『私は敵じゃない。そんなに警戒しなくてもいいよ』
ため息を吐きながら、体制を整える。
私も彼女達も賊を倒した。だが、だからといって彼女達が味方だと言う保証もない。
だから警戒されているのかもしれない。
『お兄さんなかなか強そうなのだ。武器も持たずにこれだけの数を倒せてるのも結構すごいのだ』
感心したような声が聞こえた。
こちらを褒めてはいるが、自分の方が上だと暗にほのめかした言葉だった。
『相手が弱かっただけですよ。私はそこまで強くはないですから』
『ふーん』
女の子は頭の後ろで手を組み、微笑みかけた。
『謙虚な人は嫌いじゃないのだ』
口元から覗く八重歯。
無邪気に笑う少女は、やはりどう見ても武人には見えなかった。
『お兄さんは強いけど鎧も着てないし、何処かに仕えるつもりなのか?』
士官先。それを迷う事などありはしない。
ここがどこかはわからないが、あの少年が見当違いな場所に私を送るとも思えない。
きっと近くにあの方達がいる。
『ああ、士官先は既に決めている。劉備玄徳様。君はこの方を知らないかい?』
そう言った瞬間、彼女の眼が輝いて見えた。
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