外史 似て非なる世界

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私がそう言うと少女はあっという間にこちらの間合いに入り、右腕を掴むとこちらを見上げて来た。 『ホントに?』 期待の篭った視線。 嘘などつくつもりはない。 『本当だ』 『ホントにホント?』 『本当だ』 『ホントにホントにホント?』 『本当だ』 『ホントにホントにホントにホント?』 『………もういいだろ?』 そう言った途端、少女は俯きフルフルと震え始めた。 対応を間違えたかとも思ったが、あのまま無駄な会話を繰り返しても仕方ない。 そう考えていると、少女は大きく息を吸い込み始めた。 【な、泣くのか?】 慌ててそれを止めるため声をかけようとした。 『なあ…』 『あいしゃぁぁぁぁ!!!!!!!』 瞬間、大気が震えた。 耳鳴りがする程の大声。 それを間近でうけたものだからたまったもんじゃない。 クラクラとする頭を抑えていると、少女は掴んでいた腕を引っ張り始めた。 『な、なにを……!この力はなんだ…』 明らかにおかしい。 人外の少年に与えられた力。 その力を僅かに加減しているが、少女に引っ張られないようにと、堪える為に使っている。 だが、その抵抗の結果は引っ張られる速度が僅かに落ちただけで、まったく止まりそうにないのだ。 加減しても大の大人は軽く吹き飛ばせる力。(実証済) それを上回るこの子の力は一体なんなのだ。 そう考えながら引きずられていたが、前方から凄まじい速度で走ってくる女が見えた。 『鈴々!どうした!敵の増援か!』 『愛紗!大変なのだ!信じられないくらい驚きなのだ!』 『大軍か!ちっ…まだ避難も終わってないというのに………私が足止めをする。鈴々は桃香様と村人の護衛を………鈴々、この者は誰だ?』 『このお兄さんなのだ!このお兄さんを早く見せたかったのだ!』 『この者が賊の応援を呼んだのか?見た限り兵卒。大した情報も知るまい』 そういい青龍刀をこちらに向けた。
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