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向けられたのは明らかな敵意と殺意。
しかし、身に覚えのない事で殺されるわけにもいかない。
『勘違いをするな。そこの子もちゃんと要領を得た話をしてくれ』
空いている左手を使い向けられた刀を掴むと、ゆっくりそらす。
そして私の右手をいまだ掴んだままの少女に目を向けた。
『そうなのだ!愛紗、仲間!仲間を見つけたのだ!』
少女はようやくこちらの手を離して黒髪の女の前に立つと、ピョンピョン跳ねながら嬉しそうにそういった。
【仲間?劉備玄徳に仕えたいと言った私を仲間と呼ぶ。つまりこの者達は…】
『なんと!それはありがたい!我らの活動を見ていてくれた者がいたということか!』
黒髪の女は少女の言葉に一瞬驚き、それから嬉しそうに微笑んだ。
そして女は青龍刀を下げると頭を下げた。
『先程は失礼しました。知らなかったとはいえ、罪のない貴方に刀を向けてしまった』
その凛とした態度。
少女の説明不足のせいで起きた勘違いでも、非は非として謝る事ができる。
そんな女に好感が持てた。
『いえ、そのくらいよいのです。気にしてはおりませんので顔を上げて下さい。それよりも聞きたい事が。貴方達はもしや、劉備様をご存知なのですか?』
謝る女を笑顔で許し、気になる事を聞いてみた。
似て否なる世界。とは聞いていたが、このような女も少女も元の世界で見たことがなかった。
その言葉に女達は当然のように頷いてみせた。
『勿論です!我等は劉備様の元、力なき民の為、そして漢室復興の為に戦っているのですから!』
力強くそういう女は、輝くような笑顔を見せた。
横の少女は何も言っていないが、同じように笑っている。
やはり、劉備様は劉備様。違う世界といえど目指すものは変わらず、臣下も喜んで仕えている。
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