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『アハハ!そういえば私の名前を教えてなかったね』
『私も失念していたな』
『鈴々もすっかり忘れてたのだ!』
三人とも笑い、そして姿勢を正した。
『私の名前は劉備、劉備玄徳だよ。真名は桃香。これからよろしくね』
自分の胸に手をあてて微笑みながら桃色の髪の女は言った。
『桃花様!!真名はこの者が信用にたると確信してから伝えるものです!我が名は関羽。字は雲長。共に桃花様を支えていこうではないか!』
そんな桃色の女に注意しながら、黒髪の女も私に名乗る。
『愛紗は相変わらず頭が固いのだ。鈴々の名前は張飛なのだ!真名は鈴々なのだ!これから一緒に頑張るのだ!!』
最後に小さい女の子もニカッと歯を見せながら名を告げる。
皆、私の反応を楽しみにしているように、こちらの様子を伺っていた。
『………?』
私はそんな三人の言葉に首を傾げた。
『冗談でしょうか?こちらは真剣なのです。どうか劉備様にお目通しをと願っているのですが…』
本当に困ってしまった。
この世界での唯一の手がかりだというのに。
『いやいやいや!本当だよ?私が劉備なんだって!』
『貴様、真名まで教えた桃香様の言葉を疑うというのか!剣を取れ!今すぐ討ち取ってくれる!』
『ニャハハハハ!お兄さんは面白いのだ!鈴々はホントに気に入ったのだ!』
三者三様の反応に、こちらも対応が困る。
しかし、黒髪の女は本当に怒っているらしい。こちらに圧倒的な殺気を放ち続け、こちらが剣を握ればすぐにでも切り掛かってくるだろう。
冗談でここまで怒る事はないだろう。
『まさか………本当に?』
私の言葉に二人は笑顔で、一人は怒ったまま頷いてみせた。
似て非なる世界。そうはいってもこれはあまりに………
『………ぇえええええ!!!!』
あまりの出来事に私の驚愕の悲鳴が村中に響き渡った。
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