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『わかりました。ありがとうございます』
『気にしなくていいのだ』
小さく頭を下げて、今も話続けている劉備様と関羽様へと歩きだした。
『そっか…やっぱり無理か………愛紗ちゃん、わざわざごめんね………あれ?どうしたの?』
二人の元に着いた時、ちょうど二人も話終わったらしい。
こちらを振り向いた劉備様が声をかけてきた。
『すいません、お聞きしたいことがあるのです。先程劉備様と張飛様が言われていた(真名)とは一体なんなのでしょうか?』
『え?真名を知らないの?』
とても驚いたようにそういう彼女。この世界では知っていて当然なのだろうか。
『凄い遠くから来たとか?あ…でもこんな時代だからね。幼い頃に親と生き別れた子達は自分の真名を知らないまま育つって言うし………』
劉備様は先程まで浮かべていた笑顔を消し、泣きそうな表情でこちらを見つめた。
『ね、答えたくないなら答えなくてもいいんだけど………えっと、劉封さんは真名を持ってる?』
『…いや、聞いた事もない位だ。自分の真名は持っていない』
その言葉に何度も頷く劉備様は、悲しげに顔を歪ませた。
『そっか…やっぱり………あ、その前に真名の事を説明するね。真名っていうのはね、その人が信頼を寄せる相手にのみ呼ばせる真の名前の事。もし、許可なく呼べば最大の侮辱として殺されても文句は言えない。それ程に大事な名前なの』
危なかった。
この方々の名前も知らなかった時、危うく彼女達が呼び合う名を使うところであった。
違う世界だからこその風習ということだろう。
『だからね、人によっては真名を伝えてないって事は、相手を本当の意味で信頼してないって思われちゃうの』
そう言いながら、困ったように苦笑した。
『だからさ、もしよかったらなんだけど、一緒に貴方の真名を考えない?』
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