現世 父との別れ

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黙り込んだ私を見て、反論は無いと判断したのだろう。 即座に文官の一人が父に意見を伝えた。 『さて、この者の処罰についてですが、一国を失い大量の兵をも失わせた。その行い、軍法に照らし合わせれば打ち首となっております』 覚悟していた。 自らの失策で大勢を死なせたのだ。 『………っ』 父はその罰に息を呑んだ。 文官は父に近づき、小声でなおも進言する。 『………例え劉備様のご子息といえど、軍法を破られては他のものに示しがつきませね。その上次に控えるは呉との戦。関羽殿を見捨てた者に罰を与えなくては兵の士気もあがりませぬ…どうかご英断を………』 そう呟き離れた文官は、もとの臣下の列へと戻る。 悩み、苦しむ父は、しばらく黙り込んだが、ようやく顔を上げた。 処分が決まったのだろう。 父は昔と変わった。 良くも悪くも皇帝になられた。 『近衛兵!この者を連れていけ!「劉封」を処刑せよ!』
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