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その声とともに頭の中に膨大な情報と映像が流れ込んできた。
黄布の乱、董卓の非道、孫堅、孫策の死や、呂布の死、そして関羽の最期の戦い。本来見る事の出来なかった時代の転換の場面。いずれも重要な事ばかりだった。
そして、それは過去ばかりではなく未来も含んでいたらしい。
その数多の映像の中に、見知った顔を幾つか見つけた。
兄を失った悲しみから酒に酔い、部下を殴りつけた叔父、張飛。
彼は酒に酔い熟睡していたところを、殴りつけた部下に襲われ命を落とした。
赤く燃える川。
助けを求めながらも次々と死にゆく蜀の兵士達。
それを置いて逃げる事しか出来なかった父。
その後、その戦を悔やみながらこの世を去った。
志半ばで倒れた父。
父の意思を継ぎ魏に挑む軍師。だが、彼もまた決着を付けるまえに天に召された。
そして、成都に立つ魏の旗。
蜀という国の消滅。
その全てを見た。知る事になった。
『………』
『これで終わり。君の死んだすぐ後に張飛も死んだ。義弟達と君を失い、怒りに駆られた劉備は初めて私怨で戦を起こし、夷陵の戦いで蜀は大勢の兵士と財を失う。その結果蜀は弱体、君の父の夢は叶わない。君の弟の代で蜀も滅ぶ。これが君の死んだ後の世界さ』
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