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言葉がでなかった。
でまかせだと叫びたかったが、先程頭の中に流れ込んだ映像と知識が、それは真実だと告げていた。
『どうすれば…どうすれば父は救われるのだ…あの時私が関羽殿を助けに行けば変わった未来になっていたのだろうか………』
何が悪かったのか。それはわからないが、結果を知っても何もできない無力。悔しさにまた涙が込み上げてきた。
『それはわからない。けど、少しは可能性があるかもね』
私が自分の行いに悩み、苦しんでいるというのに、聞こえてくる声はただただ楽しそうであった。
『そこで!さっき言った交換条件さ。僕があの未来を変える手助けをしてあげる。けど、あくまでも手助け。変えるのは君だからね』
その声に俯いていた顔を上げた。父を、国を救う事ができるかもしれない。
それは願ってもないことだった。
『ただし、君がしっかり働いたとしても確率はとっても低いからね。それに失敗しても成功しても、どっちでも君は僕の部下になる。この条件、受けるかい?』
『受けよう。父を救える可能性が僅かでもあるのなら、それを諦める事などできない』
はっきりと意思を伝えた。
あの処刑の直前、もはや何もできる事はないと思っていた。
死後の世界など信じてはいなかったし、父に処刑を言い渡された自分には、例え生きていても生きる意味がなかった。
それが、可能性は低いとはいえ父の為に働けるのだ。不満などあるはずもない。
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