関係図 その10

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『ミコ…』 「三原くんは友達以上には見れないし、そんな気持ちのまま、とりあえず付き合うのも違うかなぁって。 …ほんとに、そんな理由だよ」 まだ何か言いたげな舞に、被せるようにして明るく言った。 『……そっか。 まあ、ミコがそう決めたんなら…』 「うん。 なんか、期待に添えなくてゴメンね」 『何言ってんの。 ……て、うーん……。 確かに、少し期待してた部分はあったけど』 「え?」 『もしミコ達が上手くいけば、…なんて言うか、勇気をもらえるかなって』 「……」 『でも、これは私が頑張らないといけないことだしね』 自分に言い聞かせるような舞の呟きに、心臓が音を立てる。 『私、…牧瀬くんに、告白しようと思ってるの』 ――頭が真っ白になった。 これは、予想していたこと。 だけど現実になると、その胸を衝く苦しさは、自分が考えている以上のものだった。 牧瀬が舞に向ける、優しい眼差しが頭を過ぎり、呼吸が苦しくなる。 「…そっか…」 それだけ、渇いた口から絞り出した。 舞ははにかんだように、やんわりと話しを続ける。 『…ていうか、全然、脈があるからとかそういう訳じゃないんだけど。 電話はしょっちゅうしてるけど、顔を合わせるのは朝の電車だけだし…』 「…うん…」 『でも、やっぱり、友達で終わりたくないし。 ダメでもともと、伝えることで、ちゃんと意識してもらいたい』 私には、その勇気すらない。 逃げて逃げて、ひたすら、隠して。 ただ、痛みが引くのを、待つしか出来ない。 「…きっと、上手くいくよ。 ……頑張って」 声が震えそうなのを堪えて、…顔を上げると、窓の外には、月が雲に覆われていた。 .
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