赤い首輪

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ミキちゃんも犬友達だ。 見てみると、首輪はボロボロだった。 「また赤い首輪にするんでしょ?平蔵は赤が似合うもん」 ミキちゃんの言うとおり、平蔵は赤い首輪が似合う。 だから新しい首輪も赤色にした。 私と平蔵の付き合いはあっという間に8年も過ぎた。 ずっと…平蔵といたい。 永遠はない事は知っている…。 でも、それでも…。 しかし、別れはある日突然だった。 家の前で犬の甲高い鳴き声と鈍い音が同時に聞こえ、慌てて外へ出た私の目の前に広がる風景は真っ赤な血の中に横たわる平蔵の姿。 平蔵!平蔵! 慌てて平蔵を病院へ連れて行ったが…助からなかった。 平蔵…。 私の手元には赤い首輪だけが残された。 もう…闇に落ちた瞬間だった。 平蔵がいない世界。 ただいまと言っても尻尾を振って待っている平蔵はいない。 おすわり、おて、おかわり、まて!いろいろ芸を覚え私を喜ばしてくれた平蔵。 友人の作り方を教えてくれた平蔵。 一人の寂しさを紛らしてくれた平蔵。 もう…どこにもいない。 私は…あまり外へ出なくなった。 道のあちこちに平蔵との思い出があるから。 引きこもる私を心配して犬友達が訪ねて来てくれたり、晴美が来てくれたりしたが…平蔵がいない寂しさを埋める事が出来ないでいた。 でも、それでも私は生きている…。 平蔵のいない世界を生きている。 「お父さん…元気だして。平蔵だってそんなお父さん見たくないはずよ…それに…こんな時に不謹慎だけど…私、ようやく妊娠したの」 晴美はそう言って微笑んだ。 結婚8年目にしての私の孫…。 嬉しくないはずはない! 「きっと平蔵の生まれ変わりよ。人間になってお父さんとたくさん話したいのよ」 有り得ない話でさえ、今は…信じてみたいと思った。 私はよく平蔵にお前が人間ならなあ…と言っていた…それを平蔵は叶えてくれる…そんな気がして私は前向きになる事にしたのだ。 「山へ行きたい?どうして」 晴美は心配そうな顔をしている。 「毎年、平蔵と行ってたんだ。今年も行く約束をしてたから…行ってくる」 私は山の頂上に平蔵の赤い首輪を埋めようと思ったのだ。 綺麗な景色をいつでも見れるように。
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