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「飼っている犬ですか?赤い首輪してたから」
「赤い…首輪?犬種は?」
「茶色の柴犬です…あなたの犬ですか?」
平蔵…
平蔵だ…
晴美も平蔵だと思ったのか涙を浮かべている。
「はい…私の犬です。…私の…」
涙が止まらなかった。
平蔵だ…
やっぱりあれは平蔵だったのだ。
尻尾を振る音。
一晩中聞いていたのを今思い出した。
平蔵の尻尾は私に生きろ!生きろと言っているように聞こえた。
生きて、
生きてお父さん!
平蔵が私を助けてくれた。
死ぬなと…
ごめん平蔵…。
悪いお父さんだ。
一瞬でも死のうとした。
平蔵は私に生きて欲しいと言っていたのに。
平蔵…ありがとう。
涙を流す私の前に男性は赤い首輪を差し出した。
「見つけたので」
そう言って私の手の中へ置いてくれた。
平蔵の赤い首輪。
私に生きてと…尻尾を振る…優しい相棒。
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