迷子の死に神

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「あの…ここ2丁目ですか?」 はっ? 誰かの声がハッキリと聞こえてくる。 部屋には私と…死に神。 えっ?まさか…今のは、 「ここ2丁目ですか?」 再度聞かれ、私は 「いえ、3丁目ですよ」 と答えた。 「3丁目ですか?…すみません間違えました。」 「あの、2丁目は駅の方です」 「あ、すみません」 その声と同時に死に神は消えた。 はい? 今の何? 私は起き上がりキョロキョロする。 さっきのは夢? そう…夢だ。 私はその夜に部屋にお見舞いに来た優一に死に神の話をした。 案の定、彼は大笑い。 「なんだそれ、死に神が方向オンチってなんか親近感わくな」 と優一、 「夢にしてはリアルだったよ。初め見た時は本当怖かった。夢でよかったって」 「きっと南区担当になったばかりなんだよ。」 「あはは、何それ」 「でもさ、2丁目辺りで葬式あってたらヤダね」 「それ笑えないから」 私はテレビのチャンネルを変えた。 ちょうどニュースが流れていて、画面を見ていた優一があっ、と声をあげた。 「なに?」 「テレビ見ろよ、あのアパート…」 優一に言われテレビを見るとニュース画面に目を奪われた。 知っているアパートが映し出されている。 知っているも何も私が一年前まで住んでいたアパート。 殺人のニュースで、105号室の住人が106号室の住人に殺されたと報道されている。 106号室の住人はノイローゼだったと…。 心臓がバクバクと大きく鼓動を始める。 105号室は私が住んでいた部屋。 そして…、 「ここの住所って東区2丁目だよね」 死に神が口にした2丁目と言う言葉…。 ここの事だったの? 私と優一は顔を見合わせて真っ青になった。
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