オレンジ

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卒業おめでとう。 私はその文字を見つめ、手にした卒業証書が入った黒い筒を持ち校舎内へ入った。 卒業式が終わって、みんなや先生と泣きながらお別れしあって…、私は和み惜しい教室へと足を運ぶ。 私が来たのは1年生の教室。 私が初めて男の子を好きになった場所だから。 もう夕暮れの教室がオレンジに染まる、あの日…みたいに。 「あれ、こなつ?」 名前を呼ばれ顔を上げた。 同じクラスの内野君。 「なんで半ベソかいてんだ?」 内野君は私の側に来た。 私は慌てて涙を拭く。 「追試?」 私は頷く。 私は数学が苦手、だいっきらい! 問題が解けずに泣いていたのだ。 内野君は私の前の席の椅子を近づけると、座った。 「答は教えられないけど解き方は教えてやるよ」 そう言って私に解りやすく教えてくれた。 それが始まり。 内野君は髪が薄い茶色で顔立ちも女の子みたいに綺麗な男の子で、…でも無口だから女の子はみんな怖がる。 先輩から目をつけられてもいたし、いつも一人で居るイメージが強い。 だから、私に声かけてくるなんて思わなくてびっくりした。 内野君は説明が上手い。 バカな私でも理解でき、問題が解けていく。 最後の問題が解けた時に私は嬉しくて顔を上げた。 オレンジに染まる教室のせいで内野くんの綺麗な茶色の髪が金色に光って…、 「稲穂」 と訳のわからない事を呟いてしまった。 私の家は農家で米や野菜を作ってる。 風に揺れる稲穂が凄く好きで…、それが頭を過ぎったのだ。 内野君は案の定キョトン。 私は笑ってごまかした。 テストは今までの最高点で、それ以来、私と内野君は3年間同じクラスに。 彼には妹やら弟が居るらしく、その日から私の面倒をやたらと見てくれ、チビな私と不良っぽい彼の漫才コンビみたいな二人の間にはいつしか、友達が出来ていた。 いつも一人で居た内野君が友達と昼休みにサッカーしたり、バスケや時には缶けり。 私も混ぜて貰った事もある。 内野君は私の保護者。 なんて、いつも言われてた。 いくら…好きでも私はきっと妹か…ただの友達。 痛感させる事件が2年生になった時に起こった。 女の子で1番仲良しのアキちゃんが内野君を好きだと私に相談してきたから。
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