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俺達はお互いに見つめ合い笑った。
凄く、胸がドキドキする。
忘れてた感情。
ドキドキするドキドキ感。
「この桜通りは有名だもんね」
彼女がそう言う。
「そうなの?」
「え?知らないの?ここは桜の名所だよ。観光ガイドにも載ってる」
「へ~道理で、迫力あるなって」
俺は改めて桜を見上げた。
改めて見上げる俺に彼女はまたクスクス笑う。
本当によく笑う子だな。
「知ってて来てるんだと思った。」
「いや、バイトの近道だから…それに桜って女の子の花ってイメージじゃん?ピンクばっかりでさ」
「そうだね、ピンクばかりだね桜って…。」
そう言って彼女は桜を見上げる。
「他の花みたいにブルーがあればいいのに」
彼女は桜を見上げたまま呟く。
「ブルー?ブルー好きなの?」
「うん、ラッキーカラーなの」
彼女は視線を俺に向け、また笑う。
「ね、バイト…時間大丈夫?」
彼女の言葉に慌てて時計を見た。
ヤバイ…遅刻。
「あ、遅刻しそうだから…行くね」
バイバイ?さよなら?お疲れ様?
どれ言えばいいんだ?
それとも…また明日?
「また明日」
そう言ったのは俺じゃなく彼女。
また明日?マジ?
「うん、明日!」
俺は彼女に手を振った。
あ、…そうだ。
「あの、名前!君の名前」
ちょっと図々しいかな?と思いながら名前を聞いた。
彼女は答えてくれるかな?
「紗羅」
彼女は微笑んで名前を教えてくれた。
サラ…。
ヤバイ、名前まで可愛い。
「俺は陸。陸上のりく」
そう言って俺はスキップする勢いでバイト先に走っていった。
早く明日になれ!
テンション高い一日なんて久しぶりだ!
俺はただ、早く明日になれ!なんて思いながら一日を終えた。
千恵のメールも着信も無視して…。
せっかく楽しい気持ちになってるのにアイツのわがままや…泣き言とか、聞きたくない。
そして、朝9時。
彼女、紗羅は桜の下に居た。
今日は桜を見上げないで真っ直ぐに俺を見ている。
そして、笑顔で手を振る。
「待った?」
俺がそう言うと彼女はまたクスクスと笑い、
「約束してないのに変なの」
と言った。
「え、また明日って…」
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