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「つまんないプライド」
ボソッと紗羅が言う。
キツイ…かなりへこむ。
「彼女となんで付き合ったの?どっちが告白したの?」
「千恵から…告白して来た時がさ、顔真っ赤にしてモジモジして、仕草が可愛くて、オッケイしたらアイツ泣いてさ、それがまた可愛くて」
「彼女、千恵って言うんだ」
紗羅は微笑んだ。
まるで…告白してオッケイだした時の千恵のような…可愛い笑顔で。
「勇気要るんだよ告白ってさ、嫌われたらどうしようとか、友達でもいられなくなるリスクがあるのに告白してくれたのにくだらないプライドの為に彼女にシツコイとか言うんだね陸は。」
紗羅は初めて会った時の柔らかいイメージが全て砕けた。
ストレート過ぎる。
「分かってる…でも、長く付き合い過ぎてドキドキもしないし、前はHしたいとか思ってたけど、最近じゃ…全然反応しないし…あっ」
しまった…俺ってば朝9時から下ネタ。
「時間切れ。遅刻するよ陸」
紗羅はそう言って時計を指さす。
げ、完璧に遅刻っぽい。
俺はダッシュでコンビニまで走る。
「陸、いってらっしゃい」
すぐ後ろで紗羅の声がした。
俺は振り向く暇もないので手を上げただけで、走り去った。
そして、紗羅と俺の妙な朝トークは恒例になりつつあった。
桜が満開を迎えるにつれ、朝から人が増え始めた。
屋台まで出来たし。
「陸、林檎飴食べたい」
紗羅が屋台を指さす。
「は?」
「給料出たはずだよ。いつも愚痴聞いてるんだから林檎飴くらいイイでしょ?」
何故に給料日を…、
いいでしょ?とか言ってるそばから紗羅はすでに林檎飴を手にしている。
払うしかない。
俺が金払うと、
「ありがとう陸」
と微笑んだ。
この笑顔に俺は弱い。
「千恵ちゃんとちゃんと話ししてる?」
「え?」
「連絡待ってるよ、きっと」
紗羅はいつもみたいに笑うけど…何か違う。
寂しそうだ。
あれ?この流れ…。
ヤキモチとか?
ちょっと妄想しながら紗羅を見た。
彼女はまた桜を見上げている。
初めて会った日みたいに。
「桜って散る時が1番好き」
「なんで?」
「散る花びらを一発で手で取れたら願い事叶うんだよ」
「マジ?」
彼女はウンと頷いた。
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