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「今度やってみようかな…あ、散る時にさ一緒に花びら掴まえよう」
「ダメ」
速答。
結構傷つく。
「私、桜が散るまでにはもういないもの」
「嘘…なんで?」
「待ち疲れたから。」
「え?」
「もう…待つの疲れちゃった。いくら待ってもあの人来ないもの」
紗羅は目を閉じた。
閉じた瞳から涙が落ちる。
「陸は…待たせちゃダメだよ。待つのは辛いんだよ。彼女はいつも陸の為に傷ついて泣いてるよ、ちゃんと現実見なよ。じゃないと…一生会えないよ」
紗羅はそう言うと俺に林檎飴を押し付けて、走り去った。
待てない…って?
紗羅は誰かを待ってた?
また明日…
また明日会えるよね?
そう思ったのに紗羅はその日以来桜の木の下には居なかった。
満開が過ぎて、散る頃に…
「陸」
と呼ばれ振り返った。
「千恵…」
一瞬、紗羅かと思った。
「久しぶり」
そう言って千恵は笑う。
「うん」
「桜綺麗だね」
千恵は紗羅みたいに桜を見上げた。
ヒラリ…
ヒラリ…
花びらが散っている。
千恵がその花びらを必死に掴まえようとしているのを見て、
「女の子の間で有名なんだな」
と言った。
「え?」
千恵はキョトンとしている。
「花びらを一発で掴まえたら願い叶うんだろ?」
「うん…なんで知ってるの?」
「紗羅に…」
しまった…と思った。
また喧嘩の原因を…
「紗羅?陸、紗羅先輩知ってるの?」
「は?」
千恵から紗羅の名前が出て驚いた。
「陸は中学違うじゃん…あ、紗羅先輩は読者モデルとかしてたから知ってるか…でも、懐かしいな先輩。亡くなって1年だもんね。」
「は?」
耳を疑う言葉だった。
「陸、知らないの?先輩、去年亡くなったんだよ、この場所で…だから、ここあまり来たくないんだ」
何?言って…
千恵に中学の時の写真を見せて貰った。
2コ上の紗羅は桜の木の下に居た彼女だった。
何故、桜の木の下に居たのかも千恵に聞いた。
恋人を待っていたらしい。
しかも、妻子ある男。
待ち合わせ時間を過ぎても来ない男を待って…彼女は事故にあった。
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