ごえん彼

ケータイ

「どこに忘れてあった？」

「カウンターの上に」

「あ～、トイレ行く前か」

いつもの彼の声

電話ってだけでこんなに近く感じる

顔が見えないのが唯一の救い

「ワカさん、その携帯持って帰ってくれない？」

「…………はい？」

―なんて言った？

持って帰る？

何を？

「やっぱ心配だから持っててほしいんだよね」

当たり前のようにさらっと言う彼