第一章

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「おい信彦!!」 じいちゃんがそう言ってるのが聞こえるけど、とても答える気になれない。 俺は自室の襖をゆっくりと開け、そして何も無かったようにそのままゆっくりと閉めた。 ああ、俺は頭痛で頭がおかしくなっちまった。けど大丈夫。もう見えやしないさ。 そう言い聞かせてもう一度、今度はもっとゆっくりと襖を開ける。 「おお、帰ったか、我が子孫よ!!」 「じいちゃん!!泥棒が!!」 部屋にいる誰かが、そういうのと同時に俺は下にいるじいちゃんに向かって叫ぶ。 「ぬあにい?!?!」 そう言いながら、じいちゃんは箒を掲げて階段を昇ってくる。 するとその変な格好したおっさんが、俺を無理矢理部屋の中に入れ、襖を勢い良く閉めて、じいちゃんが入れないようにする。 そして、しきりに首を振る。俺は今にもこいつをじいちゃんの前に差し出したかったが、おっさんがあまりにも真剣な顔で、無言の訴えをしてくるもんだから俺は、 「あ、じいちゃんネズミだったわ。」 そんなへんてこな言い訳をした。でも… 「そうかい…。」 そんなへんてこな言い訳を信じてくれるのは、きっとじいちゃんだけだろう。じいちゃんは素直に階段を降りて行った。
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