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少し蝶の目を見つめて、直ぐに顔を俯けた
蝶と私の中に常にあった、お互い意識はしてるけど、決して触れてこなかった部分を私は今掘り返した
「……ぉ、おお」
「……ん?」
私の意外な発言を聞いて、蝶は何か笑っている様な、変な顔で、頬をあげている。何度かこんな顔を見てきた事がある
この顔は、すんごく恥ずかしい時の顔で、照れていて、でもそれを素直に言えない時の蝶の顔……
何となく予想出来ていただけに、くすりと笑みがこぼれた
「なに~?その顔」
「は?べ、別に!お前こそなんだし、にやにやしちゃって、」
「ふふ、にやにや……」
「だ、だから!何なんだ!さっきからこの感じ!ぇ、マジなんなの!」
蝶はさっきからの私の態度に戸惑ってるみたいで、少し可愛かった
「……つか、もう三時だけど」
「ほんとだね。……眠い?」
蝶の視線の先にある時計に目を向ける。この部屋の中で唯一常時動いている時計は、午前三時過ぎを指していた
「いや、俺大丈夫だからいいんだけど……花は」
「もっとおしゃべりしよ」
にっこり笑い、本音が直ぐに出た。朝になって、私が稽古に出かけてしまえば、蝶とはまたしばらく会えないから
まだ、もっと二人で居たい
「んじゃ、先に風呂入っちゃうか」
「え?」
「え?」
お風呂……?今の蝶の言い方は、ま、まさか一緒に入ろうって、言ってるの?
「……?え、入らないの?」
え、なに当然でしょ?みたいな顔をして真顔で私を見てくる
「ぇ、だ、だって」
「じゃあ俺先に入るわ」
あたふたしている私を通り過ぎて、そのまま蝶はさっきまで私が閉じこもっていたバスルームへ向かった
……蝶のばか
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