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何にも見えない暗闇の中で、私は自分の指を絡める
これからの私には時間があまり無いんだ。女優になるために沢山稽古に時間をかけないといけないし、蝶と会える時間はどんどん減っていくと思う
恋人は辞めてねとマネージャーの宮地さんにも言われてるから、隠さないといけない
もう、なんだか凄く普通から離れていくのが分かる
普通の大学生だったら……と何回考えたかな。辛いけど、夢の為って……
だから、もう最近は自分の部屋じゃご飯もあんまり作らなくなっちゃったけど
蝶にはいくら忙しくでも、私は普通の女の子だよって思ってもらえる様に、掃除やご飯も積極的に頑張った。洗えるお皿が溜まってると、少し嬉しかった
でも……それじゃきっといつまでも進まないの。私は蝶のたった一人の幼馴染みで、恋人
二人だけでしか出来ない事がある
だから、今日はちょっとでも蝶との関係を……って考えてた
でも、今まで何もなかったのに……急に?
……やっぱり気持ちの整理がつかない
あの、蝶からのメールで私は……
「なんだよ、こんな真っ暗で」
浴室の扉が開き、光が差し込み、私の事を照らした
蝶は首を私の方に向ける
「みーっけた」
蝶はちょっと小馬鹿にする様な笑みを浮かべた
まるで、子どもの時に私が凄い簡単な所に隠れたのを直ぐに見つけちゃった時みたいに
「もぅ……遅いよ」
私は唇から笑みが零れた
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