14055人が本棚に入れています
本棚に追加
蝶の背中の泡を洗い流して、スポンジを蝶に渡す
「はい、前は自分でやってね」
「おぉ」
気のない声で、私の手からスポンジを取る。さっきもおぉって言った気がした
「ふふ、さっきからそればっかり」
「え?そう?」
ぼけっとした声と顔で私の方を振り返った
「やっ……向かないで」
「え?ってかさ……花、服濡れちゃってるぞ」
濡れないようにしてたけど、やっぱり結構洋服は濡れちゃって、私の肌に少し張り付いている部分があった
「……うん。濡れちゃった」
「……えっ?ああ、うん」
「ん?なあに?」
蝶は急にしどらもどろになって、少し口を詰まらせていた
「いや、なんでもないよ。……ありがとう」
「うん。どう致しまして」
背中を流した。もう私のしたい事は終わった
うん。だから……出て行く
そう。もう終わりなの
でも、なんだろう、この感じは
この空気が抜けていってしまう様な感覚は
「……冷蔵庫の飲み物飲んでて良い?」
蝶に笑みを向けてから、洋服の袖を戻す
「ああ、それは全然……いいけど」
私がバスルームを出て行く仕草に気付いて、私の目線に合わせてくる
私はそこから視線を外して身体を動かす
「……」
私が扉に手をかけると、お湯が弾ける音と同時に、背中に暖かいものを感じた
振り返ると蝶が顔を俯けて背中をむけたままで私にお湯をかけてきた
「……な、なにするの」
ちょっと、困った
なんて言えば良いのか、蝶がなんの為に私の背中にお湯をかけたのか、何となく分かったから
凄く、困った表情で、蝶に背を向けたまま答えた
最初のコメントを投稿しよう!