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「とりあえず頭でも洗えば?」
「そ、そうだね」
浴槽から顔を半分出して、蝶は私にそう提案した
私は体に巻いたバスタオルがしっかり体に張り付いているか確認してシャンプーボトルを押した
「いや、先に髪濡らさねーの?」
「あぁっ……」
毎日やってる事を間違えちゃった。これは相当な事だ、と改めて自分の状況を見つめ直す
「……」
「ねぇ、蝶……」
私はおかしな点に気付いた
「なに?」
「何でずっと私の事見てんの?」
そう、浴槽からずっと顔を出して目の前の私に視線を向けつづける。てゆーかめっちゃ見てる
すっごい恥ずかしい。ぽっと頬が赤くなる
「え?あっ、俺が見てる?いやっ!別に見てるって感じの意識じゃないんだけどもっ!ただ、普通に見てただけっつかさ!……あの、あれ」
蝶はまさかそんな事言われるとは思っていなかったのか、あたふたして顔を背けた
「み、見てんじゃん!……ゃ、やっぱり、その、恥ずかしいよ……」
恥ずかしいよ。と素直に自分の今の気持ちを告白する事も恥ずかしくて、お風呂じゃなかったらきっと顔は目に見る様に真っ赤だろう
「……花のそーいう格好……始めて見るから、だから……目に焼き付けたくて」
「……へ、変態っ。ぇ、えろだ!」
急にそんなクサいセリフを言われ、何故だか嬉しくて、でも凄く恥ずかしくて、しどろもどろな変な事を口走った
「なっ!、そんな、えろだ!なんて言われても……俺困るんだけど」
「……ば、ばーか。普通にしててよ」
私は髪の毛を濡らし、もう一度、シャンプーを手にとった
「普通……俺の普通……」
「ふふ、それ普通じゃないよ」
蝶はなんだか急に変な顔をしだす。蝶に表情の指摘を頼むと大抵変な風になる
怒って、とか笑って、とか照れてみて?とか言った事があるけど皆へんてこりんな何処か緊張した顔をして私を笑わせてくれる
笑わせる気なんか本人には無いのかもしれないけど、そういう蝶の顔を見て、辛いとき救われた事が何回もある
今だって、ほら。こんなに楽しいもん
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