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ご、知ってる?――知らない。
莉央は、グラウンド脇の水道でブラウスを洗っていた。
どうしても、母親にだけはいじめられていることを知ってほしくないからだ。ただでも母子家庭で苦難の 多い中、高い入学金、授業料、制服等、この学校に通うために母には何かと迷惑をかけていると思う莉央は、金曜日の放課後いつもここで制服を洗っている。
「……つめたい」
春と言っても今はまだ4月上旬、水道から流れ出る水は莉央の手を赤くした。莉央の瞳と同じくらいに、真っ赤に染めた。
じゃり、じゃり、じゃり。力ない足音がストレートをハッとさせた。
「あ……」
そこにはひどく脱力した流依の姿があった。
「どうしたの?」
「助けてくれよ」
「え?」
「あんた俺と同じ顔だろ。なんでか知ってるか?」
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