に、前園琉依

1/2
前へ
/27ページ
次へ

に、前園琉依

誰か、俺を存分に罵ってください。 俺のクラスの人間はみんな汚いです。俺に直接言わずに、裏では悪口を言ってるんだろう? 俺のことなんて嫌いなんだろう? 思っていることは俺に言ってくれればいいと思います。陰で言うのが一番ずるいと思います。なんの証拠も残らないからです。ふざけんなです。 そんなことを考えて庭を歩いていると、いつも目で追っている人に会いました。一部だけボロボロになっている花壇に、優しく肥料を与えていました。いや、彼女にとってこれは『与える』という行為ではなく『あげる』という厚意だったのだと思います。 俺はずっと見ていました。今までずっと見ていました。誰も俺の気持ちなんて分かってくれなくて。とても辛かったんです。 そして先週。俺はやっとあなたを見つけました。すぐに話しかけたい衝動を抑えて、じっと見ていました。あなたはクラスの人にいじめられていたから。みんなが言いたいことを言ってくれていて、とてもうらやましくなりました。 そして今。俺はやっと話しかけるタイミングを見つけました。泣いているあなたは相変わらずきれいで、本当の、冷めた弱虫の俺が出しゃばりました。 俺のこと、わかってくれなかったけれど。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加