First Prologue

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 確かに俺は昨日、机に突っ伏して念仏のように不安をぶちまけていた…かもしれない。 だが、いざ今日、ふたを開けてみたら、自分はどこかオカしくなっていたのだ。  全然、緊張というものができない。  まったく、こんな門をくぐるのに何のためらいがあったのか、昨日の自分に問いたいものだ。 それほど気持ち悪いくらいに心持ちが軽かった。  “じゃあ、いい加減学校の中入ったら?”と思っている人も、中にはもういるだろう。  でも、この時の自分は、こう返しただろう。 “今はまだ、誰も教室になんかいやしない”と。 “誰か居たとしても、まだ高校生活1日目、入学式の日から馴れ合いを急く必要はない”。 “だったら、黙って校門の見える場所にでも待っていればいい”と。  おかげで、まだ向こうの世界とはどんなものなのか、この時の俺はまだ知るよしもなかった。  …まぁ、こういうくだらないことを耽(ふけ)っていた俺も、どうかしてんだよな。 だから昨日、父さんに『緊張感のカケラも感じられない』って何度も言われまくったんだ。  ――とまぁ、こんなぐだぐだな自虐ネタはもう置いておこう。
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