0章

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「はい!!17番さん金板102枚!!」 ボロボロになった廃墟に、舞台が設置されている。 もともとは劇場だったが、経営難による廃業で、もう人間が寄り付かないような廃墟となった。 たまに散歩している猫や野良犬、野良猫の癒しのスポットであるが、 今日は違っていた。 野良犬や野良猫の影は無く、聞こえるのは高い男性の声。 舞台上では司会者の様な男が陽気に喋っていた。 キラキラ光る赤い服に蝶ネクタイ。綺麗に整えられた黒髪は、男がどれだけ清潔にしているのか分かる。 服にはシワも無い、ピッチリとクリーニング仕立ての服にしか見えない。 髭は脱毛しているかの様に、ハゲじゃないか?ってくらい生えておらず。 それに加え、彼は時折天井から降ってくる埃を怪訝そうに眺めながら、叩き落としている。 言わば潔癖症である。 そんな彼は、奴隷市場の醍醐味、奴隷オークションの紹介者をしている。 そう。これは奴隷オークションなのである。 舞台だけに灯された光りは、彼以外に、檻に入れられ拘束されている小さな少女が居た。 まだ幼い彼女だが、その顔は整っており、将来必ず美女になるであろう少女の争奪戦が奴隷商人では繰り広げられていた。 そんな中。彼女は、舞台の周りに居る顔も知らない、名も知らない、得体も知らない仮面を着けた人間達を、怯えた目で見ていた。 あれだけ親達に村から出るなと言われたのに、出て来てしまった所為で、奴隷商人の罠にまんまと嵌まってしまった。 (うぅう・・・・・・) 奴隷に関しては、親達から伝えられていた。 男はゴミの様に扱われ、女は強姦されて、飽きられたら捨てられる。 そんな未来が来るのではないかと少女は怯えていた。 (帰りたい・・・・・・がえりだい・・・・・・っ) 気が付けば少女の瞳から涙がこぼれていた。 各所から男の野太い声が聞こえる。 少女は残酷なる未来が来るカウントダウンの様に聞こえる声を聞きたくないのか、小さな両手で頭にある犬耳を押さえた。 そう彼女は獣人だ。 犬と人間との間に生まれた人間。 犬と言えど、魔物である。ただし、ちゃんと愛し合っている。 そして、獣人は一般から見れば関わりたくない種族だ。 そのためか、奴隷としては数多く存在している種族でもある。 その所為で、一時期奴隷として流行ったエルフに習い、獣人も山に篭ってしまった。
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