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少女は成すがままに青年に手を引かれる。
時折フードから見え隠れする青年の髪色は黒だった。
夜の闇に似ている黒髪。
「前見て歩け」
「~~~っ!!」
そう言われて、意識が戻った彼女は、慌てて意識を前に向ける。
「・・・・・・」
青年は彼女に一度だけ顔を向けると、直ぐに前を向く。
その一瞬で青年は彼女の首に首輪をつけた。
青色の首輪だ。
服従の印。
彼女は青年を見る。
これから体を差し出すかもしれない青年を見る。
冷たい様な、クールな雰囲気が漂う彼は、見え隠れする髪と同じく時折、風と共に顔も見えた。
整っている顔は、彼女の村にも一人、二人いたいけめんという奴だ。
「あふぁ!?」
また見つめていると、行きなり急停止して、彼女は危うく転ぶ所であった。
ただ、青年が手を繋いでくれていたおかげで、彼女は転ばずにすんだ。
(なに!?)
彼女は驚きと言った表情で顔を上げる。
そこには、元居た住宅街なんかじゃなくて、一軒。
たった一軒建っていた。
それも屋敷レベルである。
しかも、並の屋敷では無い。
一国の王様ではないかと思うくらい。
流石は奴隷(ペット)に金板300枚(日本円で約3000万円)で買うくらいだ。
呆然とした彼女をまた青年は引いていく。
一直線に屋敷のドアへ。
(え?え?)
少女の頭脳では把握が困難に成りはじめた。
真っ白な頭を起動させようと必死にもがく彼女だが、気が付けば屋敷内に居た。
中に入れば、目が自然と行くシャンデリア。
赤い絨毯。
金ぴかな壁や床。
その光りはオークションの司会者を圧倒する。
「ボケッとすんな。早く来い」
「ひゃ、ひゃい!?」
彼女は跳びはね、ギギギと錆びたロボットの様に青年を見る。
「お前、そんな姿で居たいか?」
「あ」
彼女の姿は今、ボロボロのTシャツにショートパンツだ。
3月下旬と言えど、夜は寒さが残る。
「で、でも私は・・・・・・」
アタフタと状況が掴めない少女を青年はまた手をとり、引っ張って行く。
さらに混乱する少女だったが、青年はお構いなしで足を進める。
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