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屋敷を進んで行く中、少女はある違和感をおぼえた。
(何でこの屋敷にはメイドさんが居ないんだろう?)
そう、この屋敷には、少女が言い聞かされてきた、人間の屋敷の様に、忙しなく働くメイド、執事が誰一人居なかった。
金ぴかな屋敷を見ると、沢山のメイドさんが働いていてもおかしくない。
休んでいるとしても、誰か一人は居るはずだ。
犬系獣人の少女は、耳を立てて、周りの声を聞き取ろうとするが、全く何も聞こえない。
寝息も、呼吸さえ聞こえて来ない。
ただし、獣人が発する独特の匂いは少女の敏感な鼻に伝わって来た。
(この人・・・・・・私以外に誰か獣人奴隷居るのかな?)
自分の手を引く青年を見つめる。
「あ、あの「着いたぞ」あぅ・・・・・・」
問い掛けようとするが、青年に遮られ、さらには、またも急停止の所為で止まれず、今度は青年の背中に激突してしまった為か、最後は縮こまってしう。
「入るぞ・・・・・・大丈夫か?」
「ひゃ、ひゃい!?だ、大丈夫なのでひゅよ!!」
自分が噛んでいる事さえ知らず、震える彼女。
そんな彼女にフードを被っている青年も、緊張が解けたように、微笑みながら「そうかそうか」と彼女の頭を撫でた。
彼女は呆然としながら、部屋に入って行く青年の背中を見る。
先程までに漂っていた、近寄りたくないオーラを発していた青年が、行きなり感じが変わって、普通の好青年オーラに変わっていた。
少女はある意味あれでも不気味だと思ったが、青年は(めちゃくちゃ可愛いかったなぁ・・・・・・右腕なんか疾風の如く頭に行ったよ・・・・・・撫で撫でしちゃったよ・・・・・・)なんて事を思っているとは少女は知らず、顔をしかめながら、青年の後を追った。
バフンッと音が鳴った。
部屋に入ると、青年はベッドに倒れ込む様にベッドに寝転んだ。
青年が先に入った部屋は、家具やらなんやらが全て赤色一色の目に悪い色で染められた部屋であった。
青年は慣れているのか、入って来た少女に、クローゼットを指差しただけで、ベッドの枕を愛おしそうに抱きしめた。
寝たいのだろうか
いや、ただの先程の照れ隠しである。
少女は青年を不思議そうに見つめるも、すぐにクローゼットに目線を向ける。
(これですね)
これまた赤いクローゼットを少女は目を何回も瞬きさせながら、クローゼットを開ける。
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