The tricks played by destiny.

5/14
前へ
/115ページ
次へ
「ではこの中から半分に絞ります」 なんとか全力ダッシュで間に合った俺達の受付が終わると、担当教諭がそう告げた。 半分って…かなり厳しいじゃん…。 「あの人知ってるー」 「ん?」 流の見つめる先には芸能科のアイドルグループの何名かがいた。 「あれ?栢森くん?」 「…何か?」 ちょっとした話を終えて解散となり、教室に帰ろうとしたら芸能科の女の子が話しかけてきた。 話しかけられた征光は怪訝な顔をして返事をする。 「栢森くんは舞台で何をするの?」 「あの…誰、ですか?」 「私のこと覚えてないの?」 にこっと笑って征光を見る女の子だが、当の征光は分からないという風に首を傾げた。 「私、中学の時に同じクラスだったのに」 「へ?」 「雰囲気変わったね。あの時の栢森くんって…」 「止めて。昔の話は口にしないで」 俯きながら言う征光は今にも泣きそうな声をしていた。 「帰ろう、征光。明日に備えて練習するぞ」 「…うん、行こう?伊織ちゃん」 征光は俺を見て無理をするようににこっと笑った。 「さてと、今からスタジオ行けるかな?」 「伊織ちゃん」 大会議室から出て少し、征光が俺の手を引いた。 「ん?」 「ありがとう、伊織ちゃん」 「別にいいよ」 「気にしないでいいよ」 「うん、ありがとう、愁大さま」 「ほら、早く行くぞ。征光を扱かないと」 「やだぁ!」 そう言って征光は愁大に後ろから抱きつくと、今度は流が征光の頭を叩く。
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加