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「愁大に引っ付くなよー!」
「…………」
いつもなら目一杯の暴言を吐くはずの征光は流に叩かれたにも関わらず愁大に抱きつきながら黙ったままだ。
「…征光?」
心配した愁大が声をかけると、征光は顔を上げた。
「…うっさい…流のばか」
「え、え!?」
暴言を吐いた征光の瞳には涙が溢れていて、流はその涙を見て驚いている。
「…流のばぁか!」
「ご、ごめんなさい?」
語尾にクエスチョンマークつけて謝ってるし。
「ちゃんと謝れ」
「謝れよ」
「謝りな」
「嘘でしょー!?俺が泣かしたのー!?」
流の叫びに同時に頷く俺と紀咲と愁大。
少し膨れた流だけど、泣いている征光を見て口を開く。
「征光、ごめんなさい」
「嫌だ」
「即答ー!!即答されたんだけどー!」
「もういいよ、行こう?みんな。スタジオ行かないと」
「そうだな」
先に歩き出した俺達の後をしょんぼりして流がついてくる。
征光が泣いている理由はみんな流のせいじゃないとは分かっている。
原因はさっき話しかけてきた女の子。
征光は小学生から中学生まで虐められていた。だからその事を知る女の子が現れて少し不安定になっただけ。
それは俺達みんな、流だって知っているから、あえて何も言わなかった。
「すみません、もうスタジオは満員なんです」
なんだと!?
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