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「それもそうか。明日オーディションなんだからな」
「どうする?伊織ちゃん」
「どうすっかなぁ」
校舎から校門に歩いている途中、考えても全然答えが出てこない。
「あらー?あれはー!」
「あ?」
流が言ったのを聞いてそっちの方を見ると、中庭の芝生で遥希が寝ていた。
無防備だなー。
「遥希ー」
寝ている遥希の隣にしゃがんで遥希に問いかけると、遥希はゆっくりと目を開いた。
「…何?」
「今凄く困ってる」
「伊織ちゃん、先輩に言っても困らせるだけだよ、伊織ちゃん」
征光だけでなくみんなが同じことを思っているだろうな。勿論俺も。なんで遥希に相談してるんだろうなー。
「どうした?」
でも遥希はちゃんと聞いてくれて…。
「文化祭でライブしたいんだけど、そのオーディションが明日あるの。でもスタジオが借りられなくて」
「あー。困ったな」
「うん。困った」
遥希はまた目を閉じて、少しすると起き上がって鞄を持つ。
「遥希?」
しゃがんだまま遥希を見上げると、遥希は俺に手を差しのべた。
「俺に家、来いよ」
え!?
なぜいきなり!?
行きたいけどさ、遥希、さっきの話聞いてた!?
「何ボケッとしてんの?俺の家にスタジオあるからそこで練習すればいいだろ」
「ま…じで?」
5人全員呆然と遥希を見ている。
「早く」
「ご、ごめん」
遥希に差しのべられた手を握って立ち上がる。
そのまま手を繋いで行こうと企んでみたけど、あっさり遥希に離された。
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