Determine fate.

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「…なんで…いんだよ」 そう呟いて俺は立ち上がった。 「ちょっと行ってくる」 「もう先生来るよ?伊織ちゃん」 「今さっき関わるなと言ったのに」 引き留める征光と紀咲を置いて俺は教室を出た。勿論先輩に会いに行くためだ。 教室を出て下駄箱を通り外に出た。 先輩が行った方向的に中庭だろう。 中庭の方へ向かうとベンチに座っている先輩を見つけた。 「おい」 「…………」 後輩が挑発的な呼び方をしたにも関わらず、出会った時と変わらず黙って俺を見た。 俺を見たその瞳に息が一瞬止まる。 やばいなぁ、俺。真面目にこいつが好きだ。 「俺のこと、覚えてる?」 先輩の目の前まで来て言うと、先輩はじっと俺を見た。 「…さぁ」 「入学試験にキスした。あんたに」 「あー…」 出会ってすぐのキスはおかしな話だが。 「顔は覚えてないけどキスされたのは覚えてる」 …まじかよ…。先輩、絶対おかしい。 いきなり同性にキスされて怒りもしないし、顔も覚えてないし。 「キスしたの、お前?」 「ああ」 「悪趣味だな」 「誰にもじゃない。あんただからだ。一目惚れしたんだよ、あんたに」 「へぇ」 なんなんだよ!やりづらい! 「言ったよな?俺はこの学校に入学した。絶対あんたと同じ芸能科に入ってみせるからな!」 そう言って教室に帰ろうと踵を返したところで呼び止められた。 「お前、名前は?」 「芸能科希望1年の芹沢伊織」 俺が言い終わったのと同時に先輩は初めて笑った。ちょっと含み笑いで。 「俺は三國遥希『ミクニハルキ』。普通科2年」 ……ぇええええ。 俺、全然格好ついてない。
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