虚構空間

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外に出ると吐いた息が白い靄となって漂い、ハッとしてもう冬だということに気付く。 人間は厳しい自然環境に適応することを諦め、さらに自然を支配しようとすることでその事実から目を背けてきた。そのため、建物の中はいつも一定の気温に保たれており、快適さと引き換えに季節感を失ってしまった。 四季を楽しむことを知るべきだ。そう年配者が嘆いたのもすでに昔のこと。 彼等も年中快適に造られた空間の中ですっかり堕落しきってしまった。今ではその快適な箱から少し外に出ることさえ渋る。 そんな彼等の一人である上司に命じられ、私はその外へ出た。上下関係と言うものにはうんざりする。さぞ実力があるのでしょうから、ご自分で契約先へ出向かれたらどうでしょう、などと提案することすら許されていないのだから。
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