回想

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ある一人の男が六本木の雑居ビルの屋上で煙草をふかしている。 時刻は深夜2時。 だが下の方では賑やかに大勢の人が行き交っている。 大企業の社長、スカウト、クラブのホステス、外国人… 六本木にいる黒人は自分はアメリカ人だと言うが殆んどはアフリカ人だ。アフリカ人というとバカにされるので英語を話しアメリカ人のふりをしている。だが実際、六本木のビルのオーナーにはアフリカの富豪や中国人が多い。不況大国日本、そのうち更に多くの外国人がこの街をのさばる事になるだろう。 と、そんな事を考えながら 男は煙草の煙を溜め息混じりに吹き出した。 男の名前は藤原雅紀。 彼も昔はこの六本木で名前を馳せた一人である。 今でも六本木で水商売を長くやっている人間に彼の事を聞くと誰もが知っている。 『六本木騎士』(ロッポンギナイト) そう呼ばれていたそうだ。 裏世界の人間にも顔が効き、夜の六本木の顔のような存在。 今ではそんな雰囲気もなく、まっとうな人間そのものである。 それでは少し、彼の若かりし頃の話をしてみよう。
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