君と僕

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真っ暗な世界に一つの灯りがゆらゆらと動いている。時に速くなり、時に上にあがったり。一本の道をひたすら辿っている。 「翠起きてるかなぁ。」 少年の声が闇の中で響く。その声色はどことなく楽しげで、子供らしい口調だった。灰色の少し長めの髪の毛。青い瞳と緑の瞳を持つ少年の手には蒼白い炎が浮かんでいて、投げたり2つに分けたりして遊んでいる。ゆらゆら動いていた灯りは彼が持っていた炎であった。 「急がなきゃ終わっちゃうなぁ。」 少年は歩みを速めて目的地まで向かう。その速さは人間のスピードより遥かに速く、一瞬にして消えてしまった。道の先にある屋敷の主に早く会う為に。 一本道が丘に到達し、その丘を登ると一軒の屋敷がある。蔦で覆い隠された塀に隠された様に佇んでいる三階建ての家の窓の1つから灯りが漏れていた。またその窓が開いている。それは家の主から少年への合図である。
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