君と僕

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「お祭り?今日からだったの?」 「違うよ今日で終わっちゃうんだってば。翠と一緒に行きたいなって思って。最近全然遊んで来れないんだもん。ほらほら、早く靴履いて!」 拗ねた顔の暁月に翠は優しく笑うと立ち上がって、床に散らばっていた様々な物の中から黒いロングブーツを見つけ出して指示通り履いた。 「あ、あとこれ付けてね。翠に似合うと思って持ってきたんだ。」 暁月はズボンのポケットから出した。手のひらを見ると、群青色に輝く蝶々の髪飾りがあった。キラキラと光るそれは、翠の黒髪によく映える。 「付けるからじっとしててね。」 暁月は翠の顔当たりまで屈んで、髪飾りを左の頭部に付ける。頭ふたつ分も背の高い暁月の行動は当たり前なのだろうが、翠としては彼の綺麗な顔と、色の違う目に見惚れていた。 じっと見ていると不意に暁月と目が合った。どきっとして、思わず逸らしてしまったがそれがお気に召さなかったのか、暁は翠の左頬を思い切り舐めた。 「?」 驚いて暁月から離れようとしたが、何時の間にかがっちりと腰に手を回されていたので、それは未遂に終った。 「逸らさないで?ご主人様が逸らすと飼い犬は淋しくて死んじゃうよ?」 「べ、別に飼い犬な、んて、思った事ない。 」 「思ってなくても僕にとって翠は大事なご主人様だよ。翠がいたから僕は今ここに居て、今が幸せだって感じられるんだから。」 にこっと笑うと、お祭り終っちゃうから早く行こうと言って、翠の手を握り、部屋を後にした。
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