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~1~
「実ぅ…どうして今日目玉焼きじゃないのぉ…?」
苺が卵焼きを見て言う。
「昨日も食べたろ?苺はホント、目玉焼き好きだよね」
「だってぇ…」
「ハイハイ。さっさと食ってね。遅れるよ?」
「えっ…!うそぉ…」
「ホントホント。行くよ?」
僕はすたすたと歩いていく。
苺は涙目になっていた。
「ほっほはっへぇ~~~!」(ちょっと待ってぇ~~~!)
と、いっても口の中に食べ物がはいっているから、他人は理解できないと思う。
だけど僕は…僕は違う。
双子だから…よくわかる。
生まれて16年2人で暮らしてきたのだから…
僕らの両親と呼ばれる人たちは、生まれたばかりの僕らを捨てた。
保護されるものの、親戚の家を行ったり来たり。
毎回「家には金がない」だの「あんな子なんか」と言われ続けた。
そんななか“僕ら”が導いた結論…
それは《人を信じるな》だった。
信じていいのは僕らだけ。
そうやって生きてきた。
学校でも、どこでも。
人との間にカベを作り、人と関わらない様にしてきた。
僕らはそうでしか生きられなかったんだ…
「実、実」
苺が教室で話しかけてきた。
はじめは、クラスの人たちも「友達になろうよ」と僕らにちょくちょく話をしに来たものの、僕らがまったく相手にしなかったのを怒ったのか、悲しかったのか…
今では全くよってこようともしない。
十分ほどしてチャイムがなった。
「苺、席着きなよ。ホームルーム、始まるよ」
僕の言葉に苺は素直にうなずいた。
「また後でね、実」
「うん、また後で」
苺が自分の席に着いたのを見て僕はため息をついた。
苺は席でじっと先生が来るのを待っている。
他の人は近くの人と話したり、楽しそうに過ごしている。
…苺もいい加減友達作らないと学校、楽しくないんじゃないかなぁ…
僕はそんなことを考えていた。
…って、僕も同じか…
チラッと苺を窺う。
身じろぎ一つしないたった一人の妹を見て、僕は大きくため息をついた。
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