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隣から息を飲む音がした。 藤井も驚いてるらしい。 それほどこの姿は目を引く。 けどそれ以上に俺は驚きが強くて、 まさか写真で気になっていた人物が目の前にいるとは思わなかったから。 如月は俺たちの視線を受けながら慣れた様子で鬘を脇に置いた。 そしてこちらに視線を戻す。 …あ、 目を離さない俺たちを見て、如月が笑った。 哀しそうに。 「ちょっと待ってて」 そう言って俺は自分の部屋へ入った。 たしか…こっち?どこやったかな使わないから奥にやったんだよね。あ、あった! タンスの奥にしまわれていたそれを持って再び共有スペースに戻る。 戻った俺を丸くなった4つの目が出迎えた。 「…なんだそれ」 俺の手に握られたそれを見て藤井が呟く。 「ウィッグ」 「じゃなくて、なんでそんなもん…」 「如月にどうかなって」 「…俺?」 如月がまだ唖然とした様子で口を開く。 俺は頷いて如月の横に腰を降ろした。 黒だけじゃなくて茶色とか赤とか金とか色々合わせてみる。 「如月の自毛長いね。つける時髪結ばないと隠れないな」 「あ、朝比奈、」 「なに?」 「…なんで」 だって、 「如月自分の髪嫌い?」 「は?」 「見られるの好きじゃないみたいだから」 顔を歪めて、見つめる俺たちを眺めてた。 「俺は好きだけど、見られるの嫌なら見せることないと思って」 「………」 「この鬘厚いから蒸すでしょ?重いし。まだこっちのが自然だしね」 ねえ?と藤井を見れば黒のウィッグをつけた如月を見て頷いた。 「まあ、そっち見た後だと作り物くさいな」 「だよね?!」 そう満足して笑う俺を如月がじっと見てるとは気づかなかった。
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