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寮から学校へ向かい、学校を背にして道なりに進む。
流れる川みたいに緩やかな曲線を描いて土色の煉瓦が校舎と外を繋ぐ門まで続いてる。
雨は止んでうっすら陽が差してきた。
…ものの、やはりまだ肌寒い。マフラーは着けたまま少し小走りで坂を下る。
鉄で出来た柵は門より低く、確かによじ登れそうではあるが…あの如月がどうやって登ったかわからず、けれど脚や手を懸命に伸ばしたんだろうかと考え笑いが込み上げた。
えんじ色の門は雨に濡れたからだを光で照らしさらに重厚な雰囲気を重くさせていた。
基本外出禁止のこの学校でこの門が開くのは入学式、卒業式などの催事に限られる。
まるで監獄だと言うひともいるけど、それだけ大事なものを守ってる、とも思える。
そうして見るとこの扉の重苦しさはかえって安心させてくれるから不思議だ。
さて、この門が開かないならどこから出入りしてるのか、とみんな疑問になっただろう。
実は門の中、真ん中から少し端の部分に小さく備え付けられた扉があるんだ。
パッと見模様にしか見えないよう形造られたここの存在を知るのはごく一部。
俺は明さんの所に遊びに来てたまたまここが開く瞬間を見てたので知ってるってわけ。
いやほんと知らないとわかんないよこれが扉って。ドアノブ無いし。守衛室からスイッチで操作しないと開かないし。
さすが金持ち学校。もう一度言おう。さすが金持ち学校。
で、そのすぐ傍にある交番みたいな造りの建物が守衛小屋。
明さんの城ってわけ。
窓から中を覗くとカップに紅茶だろうか?お茶を注ぐ明さんが見えた。
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