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窓を叩くと明さんがこちらに気づきパッと笑顔を浮かべた。
ポットを置き走ってこちらへやってくる。
姿が見えなくなるとガチャリと鍵の開く音が脇のドアから聞こえた。
「森ちゃん!いらっしゃい」
語尾にハートが付きそうな喋り方だけど声は正反対に野太く、声帯は相変わらずしっかり仕事をしてくれてるらしい。
まあ俺にとってはこの声が明さんの声だからいきなり高くなったら違和感ありまくりで仕方ないけど。
それにギャップ萌っていうじゃない?!あれこれギャップちゃう?
明さんは自毛をカーキブラウンに染め同色のエクステで胸まで伸ばしてる。先だけ巻かれてるそれは警備服にはミスマッチだけど細顔の明さんにはよく似合う。まあ少し骨が出てるのはご愛嬌ってことで!
身長高い上に体格は運動部並によくて制服が誂えたようにピッタリくる。本人は嬉しくないって言ってたけど、でも好きな人に褒められた時は顔染めて報告してくれました。ほんと可愛いなあ…
明さんが開けてくれたのでお邪魔しますと言ってすぐ入った。
中は暖房こそ入ってなかったけどカップからたつ湯気が部屋を暖めてくれたらしい。よく見れば窓が少し曇ってる。
「あったかい…」
「ほんと寒がりねえ」
一足先にテーブルへ戻っていた明さんは、はいどうぞとカップを席の前に置いた。
さっそく飲むと身体の奥から熱が広がる。あ、鳥肌。
幸せに浸ってると明さんはこちらを見て笑った。
ん?なんか…
「明さん今日化粧濃くない?」
聞いた瞬間、ギクリと音を出してそうなくらい顔を固まらせる明さん。
「明さん、肌荒れるって言ったでしょ?姉ちゃんからも怒られたじゃん」
「だって!」
何か言おうと口を開き、しかし言えないのかまた口を閉じる。
様子がおかしい。
こんなに狼狽える明さんは…
「…ダーリンさんと何かあった?」
好きな人と何かあった時くらいしか見たことない。
俺の言葉に明さんはずっと耐えてたのか、顔を崩しすぐ涙でいっぱいになった。
「森ぢゃああああああんっっ!!」
「うわっ!」
椅子ごと倒れそうになったけどその前に明さんが膝をついたのでなんとか持ちこたえた。
わんわん泣く明さんの頭から帽子を外して撫でると少し落ち着いたのか大声は出さなくなり、しばらくそんな状態で俺は明さんが泣き止むのを待った。
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