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「…鳥男って…」
「チキン、臆病者って意味で鳥男。ピッタリでしょ?」
「………」
それは間宮が気持ちを伝えないことをさしてるんだろうか。
「別に伝えないことを非難する気ないわよ?」
「そうなの?」
「ええ。いまの関係を壊したくないっていうあいつの気持ちだって、わからなくないもの」
そう言う明さんの顔は悲しそうだった。
けれど不意に怒りを宿した眼を浮かべ、窓の外を睨んだ。
「けど、あいつは巌ちゃんが好きなのに他の奴と寝るのよ?ありえない。しかも理由が、自分の気持ちに気づいてもらえなくて寂しいからって、バッカじゃない?!自業自得よそんなん!!伝えないくせに気づいてもらえないって凹むなんてどうかしてるわ!卑怯者よ!あたしはあの人を好きになってから、他の奴に手を出したことなんて一度もない!」
明さんは伝えて、実っていないけれどまだ諦めず気持ちを伝え続けてる。
間宮は伝えていない。いまの仲間という関係を壊したくないから。けれどやっぱり虚しいし、堪えきれなくて、本人に縋れないから他の人でその場を凌いでるのかもしれない。
たしかに明さんの言う通り、他の人で辛さを紛らわす間宮は卑怯かもしれない。臆病かもしれない。
けど、明さんのように、ふられても好きでい続けるのは、もしかしたら相手の重荷かもしれない。
どっちがいい、悪いなんてない。
明さんの一途に想い続ける姿を、俺は格好いいと思うし、
間宮の壊したくないからと想いを隠し耐える様は凄いと思う。
俺は想い続けられるだろうか?
堪えられるだろうか?
でも、飛田さんはきっと、どっちがいいなんて言わないんだろう。
あの人はどんな想いだろうと受け止めて、自分なりの答えを返すんだろう。
明さんに対してそうだったように。
明さんが傷ついても、いまだ好きでいられるような人だから。
もしかしたら、間宮はそれを怖れてるのかもしれない。
俺が如月とのことを言った時、飛田さんにバレて軽蔑されると怖がってるんじゃないか、そう思ってたけど、きっと違う。
俺が如月のことと一緒に飛田さんを好いてるということも言うと考えて、その気持ちを知られていままでの関係が壊れることを怖れたんじゃないか?
明さんのように、自分も断られると思ったのかもしれない。
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