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ただの推測をこんなふうに言うなんて間違ってる。 二人の言うように飛田さんは本当に気づいてなくて、 昨日間宮のことを気づいたのはたまたまかもしれない。 けどたまたまでも気づくくらい、間宮は追い詰められてる。 泥の底で呻いて、助けも求められない。 そんなの見てられない。 放っておくなんて無理だ。 「………」 「………」 どれくらいだろう、沈黙が続く。 間宮が持っているタバコはほぼ灰になっていた。 携帯灰皿を取り出しそれを押しつけると間宮はもう一度こちらを見た。 まだ、どこか怯えた眼で。 「ガキの妄想だね」 「………」 「しかも三流小説並みの陳腐な話。聞いててイライラするよ」 「どうしてイラつくんですか?子供の戯れ言だって聞き流せばいいじゃないですか」 「うるさい小蝿は無視出来ないだろう?」 「聞き流せないくらい余裕が無いの間違いでしょ?」 「黙れ。それ以上言うと痛い目合わせるよ」 「それは断固拒否で」 机から離れようとした間宮を制し俺は椅子を動かした。 俺と間宮の間に置けば…簡易バリケードの完成! 「…何の真似だ?」 おお間宮が変な顔してる。 まあわけわかんないよな。 「えっと、俺のこと、好きだって言う奴と約束したんで。…好きな奴以外にそういうことさせないって」 間宮の瞳が揺れる。 けど何を思ってるかまではわからない。 「そういうことって?」 「キス、とか…」 好きな奴が他の誰かとそういうことをしていて、平気でいられるわけない。 そうナツは教えてくれた。 「先生は飛田さんに好きになってほしくないの?」 「は?」 「もう諦めたの?」 「なんでそうなる」 「諦めてないよな?だから馬鹿なことやってんだし」 「…いい加減に…」 「好きな奴が、…好きでもない奴とそんなことしてるって知ったら、傷つくだけだよ」 好きな人も、自分も… 「たとえそれが、仲間としての好きでも」 「………」 間宮が品定めするように俺を見る。 その目にさっきまであった怯えは、少しだけ薄れてるように感じた。
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